

「真菰(まこも)」という植物をご存じでしょうか。
真菰は、古くから日本の暮らしや文化と関わってきた植物です。
食材として利用される「マコモダケ」をはじめ、真菰茶や真菰風呂、しめ縄など、さまざまな形で利用されてきました。
また、神事や日本の伝統文化とも深い関わりがあることから、近年では「日本の古くからの暮らしを見直す植物」としても注目されています。
この記事では、岐阜県中津川市蛭川で真菰を育てているひるかわファームが、真菰とはどのような植物なのか、特徴や利用方法、文化との関わりについて分かりやすく紹介します。
真菰(まこも)は、イネ科の多年草です。
水辺や湿地など、水分の多い場所に自生する植物で、日本でも古くから身近な植物として利用されてきました。
見た目は稲やヨシなどにも似ていますが、成長すると背丈が1.5〜2m程度まで高くなり、細長い葉を大きく広げます。
真菰は、単なる野草ではありません。食、暮らし、農業、伝統文化など、さまざまな場面で利用されてきた植物です。
特に知っておきたいのが、「真菰」と「マコモダケ」は同じものではないということです。
真菰について調べていると、「マコモダケ」という言葉を目にすることがあります。
マコモダケは、真菰の根元付近にできる肥大した茎の部分を食用としたものです。シャキシャキとした食感が特徴で、炒め物や天ぷら、煮物など、さまざまな料理に利用されています。
つまり、
真菰=植物そのもの
マコモダケ=真菰から採れる食用部分
と考えると分かりやすいでしょう。
マコモダケができる仕組みにも触れておくと、真菰の茎の内部に「黒穂菌(くろぼきん)」という菌が入り込み、その作用によって茎が肥大することで生まれます。これは真菰が十分に成長した秋にのみ見られる特有の現象です。
真菰とマコモダケは、収穫のタイミングが異なります。
| 項目 | 収穫時期 |
|---|---|
| 真菰(在来種) | 8月〜9月頃 |
| マコモダケ | 10月中旬頃 |
このように、真菰の葉が利用できる時期と、マコモダケとして収穫できる時期には約1〜2ヶ月のズレがあります。これは、黒穂菌の作用による茎の肥大が、真菰が十分に育った秋になってから進むためです。
当農園では、この時期の違いを踏まえながら、水位の管理や生育状況の見回りを行い、それぞれの収穫時期に合わせた栽培管理をしています。
真菰は、水分の多い場所を好む植物です。水辺や湿地などで育つことから、一般的な畑作物とは少し違った環境で栽培されます。
当農園では、岐阜県中津川市蛭川の自然環境の中で真菰を育てています。蛭川には山や田畑が広がり、自然豊かな環境が残っています。
私たちが真菰を育てているのは、単に作物として販売するためだけではありません。この地域に残る自然や、昔から日本人が植物とともに暮らしてきた文化にも目を向けながら、真菰の魅力を伝えていきたいと考えています。
真菰は、さまざまな方法で利用されています。代表的なものを紹介します。
真菰の代表的な利用方法の一つが、マコモダケです。
クセが少なく、加熱すると甘みや独特の食感を楽しめます。焼く、炒める、揚げる、煮るなど、さまざまな調理方法があります。10月中旬の旬の時期には、季節の野菜として楽しむことができます。
真菰の葉などを利用して作られる「真菰茶」もあります。お茶として楽しむことで、真菰を日々の暮らしに取り入れることができます。
真菰をお風呂に利用する「真菰風呂」という楽しみ方もあります。真菰を身近な暮らしの中に取り入れる方法の一つです。
植物を食べるだけではなく、香りや風合いを楽しみながら暮らしに取り入れるという考え方にもつながります。
※真菰風呂については、医療的・美容的な効果を断定するものではなく、昔からの利用方法や楽しみ方としてご紹介しています。
真菰について調べていくと、一つの植物からさまざまな世界が広がっていることに気づきます。
食べる。飲む。お風呂に使う。しめ縄にする。神事に関わる。そして、農家が育てる。
真菰は、単なる農作物としてだけではなく、自然と人との関係を考えるきっかけにもなる植物です。
私たちは、便利なものを買うことが当たり前になった現代だからこそ、昔の人々が身近な植物をどのように利用してきたのかを知ることにも意味があると考えています。
真菰について調べていくと、食材としての真菰だけではなく、日本の文化との関わりにも気づきます。
真菰は、古くから人々の暮らしの中で利用されてきました。特に興味深いのが、神事との関わりです。
日本では、植物や水、米など、自然に存在するものを暮らしや祭祀の中で利用してきました。真菰も、そのような日本人と自然との関わりを考えるうえで興味深い植物の一つです。
真菰と神事の関わりを語るうえで代表的な例が、島根県の出雲大社です。
出雲大社では、毎年6月1日に「涼殿祭(すずみどののまつり)」という神事が行われると言われています。この神事では、国造(こくそう)が敷地内を移動する際、神職によって道中に真菰が敷かれ、参拝者がその真菰を持ち帰る風習があることから、古くから「真菰の神事」とも呼ばれています。
また、真菰は「浄化の植物」とされ、全国の神社でも神具として用いられてきたと紹介されています。真菰を編んだ敷物は「薦(こも)」と呼ばれ、神様へのお供え物(神饌)の下に敷いたり、地鎮祭で祭壇の下に敷いたりする際に用いられてきました。
真菰と神事については、こちらの記事で詳しく紹介しています。 →[真菰と神事|日本の伝統文化との関わりを探る]
しめ縄は、日本の伝統文化の中で重要な意味を持つものです。真菰を使ったしめ縄もあり、地域や文化によってさまざまな形で受け継がれています。
しめ縄の材料には神社によって違いがあり、伊勢神宮では麻が使われる一方、出雲大社では真菰が使われていると言われています。真菰の葉や茎を利用して形を整え、しめ縄として仕上げていきます。
真菰は、『古事記』や『万葉集』といった日本最古級の文献にもその名が見られるとされ、麻よりも古い時代から日本人の生活に存在していた植物だと紹介されることもあります。
植物を使って道具を作り、生活や祈りの場に取り入れる。そこには、現代の生活では忘れられつつある、日本人と植物との関係を見ることができます。
編集部注: 上記の神事・文献に関する記述は、真菰に関わる複数の資料や生産者の情報をもとに紹介しています。神社ごとに詳細が異なる場合や、伝承の域を出ない部分も含まれるため、正確な情報は各神社・文献にてご確認ください。